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(570) トリチェリの真空について
三銀杏
2006年07月01日(土) 20時29分

気象予報士を目指して勉強している者です。

トリチェリの真空という話があります。今回、書き込ませていただくのは、この話からすぐに圧力測定の原理に話を持っていく、という教え方に疑問を感じたからです。

トリチェリの真空とは、巨大なシャーレのような容器に水銀を満たし、試験管のような長いガラスの管にも水銀を詰め、容器の上で倒立させると、管内の水銀液面がシャーレの中の水銀液面よりも760mm高いところで止まり、それより上には真空ができる、というあれです。

これについて質問があります。

大気圧による力は「シャーレの断面積」マイナス「試験管の断面積」に大気圧をかけたものになりますよね。

また、水銀に働く重力は密度に体積と重力加速度を掛けたものになりますよね。

これらがつりあった状況での水銀液面の差が水銀柱圧力である「760mm」であると。

ところがです。

上のつりあいの状態を式で表すと、
    pS=ρVg
すなわち
    pS=ρshg
ただし、
p:大気圧
S:シャーレの断面積-試験管の断面積
ρ:水銀の密度
s:試験管の断面積
h:水銀の液面の差(以下「水銀柱の高さ」)
g:重力定数

が、成り立ちます。
このとき、この式を変形すると、「水銀柱の高さ」は無次元項である
    S/s
に比例することになります。つまり、シャーレの大きさが違えば「水銀柱の高さ」は必ずしも同じにはならない!例えばシャーレが大きければ「水銀柱の高さ」は760mmよりも大きいはず、ということになってしまいます。

ちなみに、水銀の密度、重力定数、標準大気圧などの定数を代入し、以上の式から水銀柱の高さが760mmになるためのシャーレと試験管の断面積比を算出したところ、
    シャーレ:試験管=1.89:0.89
ということになってしまいました(計算間違いをしているかもしれません)。

もちろん、ただ真空を作りたいのであれば、よりでかいシャーレに対してより長い試験管を用意すればいいだけですから、760mmという定量的な話はさておき、トリチェリーのように真空は作れることになります。

トリチェリーは単に真空を作っただけであり、水銀柱の高さと気圧の関連を実験して確かめたのは、確かパスカルではなかったかと思います。そしてもちろん、パスカルが用いた水銀気圧計はトリチェリのものとは異なるものであったはずです(パスカルはその気圧計を山に携行して高度と気圧の関係を指摘したのではなかったかと。すなわち携行可能に設計され小型化されたものを使っていたはず)。つまり、トリチェリの真空による実験装置で即気圧測定装置の原理を説明しようとするのには飛躍があるのではないかと、思ったわけです。

(このへんの、真空の発見から水銀気圧計の作成までの歴史にも興味があるところです。どなたかよい本をご存知でしたら教えていただけると幸いです)

インターネットやどんな参考書を見ても、大きいシャーレの中に試験管を倒立させた絵が載っており、かつ「760mm」と書き加えられています。これでは話が違う!と、思ったわけです。水銀柱の高さはシャーレの大きさに依存するはずだ!と。

本当は、U字管を用意して片方の端を密封しておき、水銀の液面差から標準大気圧を測定した場合にのみ、水銀柱の高さがこれこれの値である、という確定的な話ができるのではないでしょうか(この場合、S/sは1です)。

以上の私の考えはどこか間違っているのでしょうか。どなたかご教授くださりたく、書き込みさせていただきました。

あまりに初歩的な勘違いをしているかもしれません。その際は是非指摘していただければ非常にありがたいです。

なにとぞよろしくお願いいたします。



(571)  (Re:570)
Re:トリチェリの真空について
まさ和
2006年07月01日(土) 21時43分

三銀杏さん みなさん、まさ和と申します。

>大気圧による力は「シャーレの断面積」マイナス「試験管の断面積」に大気圧をかけたものになりますよね。

 この力がすべて試験管内の水銀を押し上げると解釈するからおかしなことになるのでは?
 仮に、この考え方で試験管の先に穴を開けてやると大噴水ができあがってしまいます。

 大気圧による力がどこに作用しているか考えればよいと思います。


2006/07/01 まさ和 from 播磨國山津屋



(572)  (Re:571)
Re:トリチェリの真空について
三銀杏
2006年07月01日(土) 21時59分

> 仮に、この考え方で試験管の先に穴を開けてやると大噴水ができあがってしまいます。

そうすると、管内にも空気がなだれ込んで大気圧が働くため、管内の液面はシャーレの液面と同じ高さになると思われます。噴水にはならないと思いますが。

あくまで、試験管の液面より上には「真空」を仮定しているので、外の大気圧とのつりあいの式が成り立つわけでして。

> 大気圧による力がどこに作用しているか考えればよいと思います。

シャーレにたまった水銀の表面に作用しているのでは。違いますか?

まだよくわからないのですが、ご回答ありがとうございます。



(577)  (Re:572)
Re:トリチェリの真空について
三銀杏
2006年07月02日(日) 18時11分

図入りの詳細な説明、ありがとうございます。

>そもそも間違っています(無意味です)。

赤い面に加わっている「圧力」と、青い面に加わっている「圧力」を同じと見なす、というのは納得できます。

言い換えると、水銀が青い面で大気に及ぼす圧力と、反対に大気が水銀に及ぼす圧力が等しい。また、赤い面に水銀柱が与える圧力と、赤い面で水銀が水銀柱に与える圧力も等しく、つりあっている、ということですよね。そしてまた、水銀が柱や大気に与える圧力はどちらも相等しい、ということですね。そして、その圧力が水銀の中で伝達されてどこでも同じになっている、と。

もっと単純に言えば、
「試験管のあるところだけ、気柱の代わりに水銀柱が載っていて、この重量が本来の空気の重さと同じになっている」ということですよね。

高いところにいくと、下にある分の空気の重さがなくなるので気圧が下がったことになる、というのは気象学の説明でよく見かけるものです。なんて回りくどい説明をするんだ、と反発していましたが、以上のような考え方をすると「水銀柱が下がる」ということと関連付けて直感的に理解できますね。

ところで、水銀の中で圧力が伝わって(どこでも同じ圧力となって)、間接的には赤い面に加わる「力」と青い面に加わる「力」が同じになる、という解釈はどう間違いだと説明できるのでしょうか。

もちろん、「ある圧力を加えられた流体の中の圧力はどこをとってもその圧力になる」ということは知っています。そうでなければ、水槽に太いガラス管を突き刺したら、ガラス管の方から水が噴出してくる、というまさに正和さんが指摘したようなおかしなことになってしまいます。「圧力」を比べなければ話がおかしい。

ですから、田部さんのおっしゃるように、直接「力」を比べることは無意味であるということには納得します。比べるなら「圧力」を比べなければならない、ということで理解しました。ご回答ありがとうございます。

…やっぱり、エネルギー保存則で説明するのが妥当なのかなあ…

圧力×流量(圧力×面積×長さ=力×長さ)はエネルギーであり、これが液体内部で損なわれることなく伝達される、というような説明でいいでしょうかねえ。で、このエネルギー保存則(包括的にはベルヌーイの定理ですが)を満たしながら(つまり流体内で加速がない以上どこでも圧力一定の状態を満たしながら)流体は振舞うので、圧力の次元で考えないと話がおかしくなるわけですよね。


>単刀直入に誤りを指摘したほうが、(すでに十分大人である)三銀杏様のためには良いだろうと勝手に判断させていただきました。

はじめのカキコでもそのようにお願いしておりましたので、願い通りの返信をくださったことに非常に感謝しております。

どうもありがとうございました。



(574)  (Re:571)
Re:トリチェリの真空について
まさ和
2006年07月02日(日) 00時25分

田部勝也さん みなさん、まさ和と申します。

>もしも、まさ和様の先のコメントが、三銀杏様が自分で考えるよう促す事を目的としたものだとしたら、出過ぎた真似をお許し下さい。

 長文の苦手なワタシがたまに書き込もうとするとあんな文章になってしまいまして・・。
 必要に応じて2回目以降の書き込みでワタシか誰かが詳細に立ち入れば・・という程度のだらけた心構えですので、お気になさらず。

2006/07/02 まさ和 from 播磨國山津屋



(575)  (Re:570)
Re:トリチェリの真空について
TOSHI
2006年07月02日(日) 03時44分

 お久しぶりです、三銀杏さん、TOSHIです。

 長いガラス管の水銀中のどこでもいいですがある点の近傍である断面積をとって「上からの力」=「下からの力」であれば釣り合うわけです。力=圧力×断面積なので同じ断面積なら圧力が同じなら釣り合います。

 圧力が同じなのに面積の違いで大きい力と小さい力になるのは「パスカルの原理」ですね。

                                           TOSHI



(578)  (Re:575)
Re:トリチェリの真空について
三銀杏
2006年07月02日(日) 18時27分

> お久しぶりです、三銀杏さん、TOSHIです。
お久しぶりです。その節は確か、飛行機の話で(笑)

かつてベルヌーイの定理がどうこう、と散々語ったくせして、流体内の力の伝達は「圧力」で考えなければならないということに気づかなかったのは誠に恥ずかしいですが(笑)

力で比べようとするのはやっぱり無理があるように思います。私が疑問を呈したのは「シャーレの面積と試験管の面積は異なり、圧力が同じだとしたら、『力が』違って当然だから、面積に依存して水銀柱の高さも変わる!」と早合点してしまったからです。もちろん、力ではなく圧力を比べる必要がありますよね。

> 長いガラス管の水銀柱のどこでもいいですがある点の近傍である断面積をとって「上からの力」=「下からの力」であれば釣り合うわけです。

これは「静水圧平衡」の話ですね。

> 圧力が同じなのに面積の違いで大きい力と小さい力になるのは「パスカルの原理」ですね。

パスカルの原理を元に、より包括的な理論として「ベルヌイの〜」が出てきたわけですから、パスカルの原理だけで油圧も水銀柱の話も説明できるわけで、前回の書き込みはやや話が込み入りすぎたかな…などとも思ってます。。

パスカルの原理、というのも「ようするに、テコの原理だよ」と説明すればもっととっつきやすいかもしれませんね。ところで、テコの原理、というところから流量の話が出てきて、エネルギー保存則である「ベルヌイの〜」へつながっていく、という感じで捉え方は合ってますでしょうか。

返信ありがとうございました。





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