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(508) 熱放射
航空
2006年06月16日(金) 19時14分

航空と申します。
連続での投稿、申し訳ありません。実は熱の問題でも少し混乱していることがあるのです。

「温度を持つものは、その温度に対応した電磁波を出す」というのはよく知られていることだと思います。
だからこそ熱した金属は可視光で光るし、人間は赤外線を出すわけですよね。
このことを受け入れれば、プランクの放射公式も黒体放射も理解することができるのですが、
私が疑問に思うのは、なぜ温度を持つものは放射を出すのか?ということです。
温度も持つ、ということは原子レベルので振動が起きているものと思いますが、その振動がどういう経緯で放射を出すのでしょうか。
稚拙な質問かもしれませんが、御回答お願い致します。



(511)  (Re:508)
Re:熱放射
TOSHI
2006年06月17日(土) 00時44分

 こんばんは。航空さん、TOSHIです。

>「温度を持つものは、その温度に対応した電磁波を出す」というのはよく知られていることだと思います。
>だからこそ熱した金属は可視光で光るし、人間は赤外線を出すわけですよね。
>このことを受け入れれば、プランクの放射公式も黒体放射も理解することができるのですが、
>私が疑問に思うのは、なぜ温度を持つものは放射を出すのか?ということです。
>温度も持つ、ということは原子レベルので振動が起きているものと思いますが、その振動がどういう経緯で放射を出すのでしょうか。
>稚拙な質問かもしれませんが、御回答お願い致します。

  そうですね、結構むずかしい話ですね。

 温度が違う2つの物体を接していると必ず同じ温度になるまで熱が流れます。これは熱伝導ですが、熱い石が空気中に置いてあったりしても、空気と同じ温度になるまで熱が放射されます。この放射の正体は赤外線などの電磁波ですね。

 自然は「平衡状態」に向かおうとする傾向があります。つまり「熱平衡状態」=温度が等しい状態、に向かって熱が移動しようとするわけです。対流もこれが原因です。これは熱力学の経験則です。

  というわけで、経験則なわけですが、たとえ真空中でも熱いものと冷たいものがあると、つまり温度が違うと、熱いほうから冷たいほうへと熱が流れます。そして既に「熱平衡状態」にある空洞内のように一定の等しい温度であっても、これは実は原子からの放出と吸収がつりあっているだけで、放射がない、というわけではありません。

 熱い=「温度が高い」ということは古典論では固体なら格子振動などの熱振動が大きいわけですが、「古典電磁気学」ではマクスウェルの方程式に従って、電子などの電荷を持った粒子が加速度運動をすれば、それは電流があって時間的に変動しているというわけですから、それを源として必ず電磁波が生成されて放射されます。

 一方これを量子論で言うと、温度が高いということは気体や固体などの物質を構成しているたくさんの原子のうち、原子の束縛電子がその「基底状態」にあるよりも高いエネルギー状態である「励起状態」にあるものの割合が多くなるので、比較的多くの原子で、自発的に電子が基底状態に落ちる確率が大きいので、そのときに多くの、光子=電磁波を放出するというわけです。

 古典論にしても量子論におしても、これ以上、このメカニズムが「どうしておきるの?」と聞かれても、どうして万有引力が働くのかというのに重力波=重力子があるから、とまでは答えられても、それ以上「どうして?」と聞かれても、やはりそれは「神様がそういうように自然界の物理学法則を作ったのだろう」としか答えられません。

                                      TOSHI



(521)  (Re:511)
Re:熱放射
航空
2006年06月19日(月) 01時00分

TOSHIさん、ご回答ありがとうございます。

> 熱い=「温度が高い」ということは古典論では固体なら格子振動などの熱振動が大きいわけですが、「古典電磁気学」ではマクスウェルの方程式に従って、電子などの電荷を持った粒子が加速度運動をすれば、それは電流があって時間的に変動しているというわけですから、それを源として必ず電磁波が生成されて放射されます。

非常に分かりやすいご回答、ありがとうございます。つまり「温度を持つ⇒振動する⇒振動は常に加速減速の繰り返し⇒加減速する電荷をもつ粒子は放射を出す」ということですね。


> 一方これを量子論で言うと、温度が高いということは気体や固体などの物質を構成しているたくさんの原子のうち、原子の束縛電子がその「基底状態」にあるよりも高いエネルギー状態である「励起状態」にあるものの割合が多くなるので、比較的多くの原子で、自発的に電子が基底状態に落ちる確率が大きいので、そのときに多くの、光子=電磁波を放出するというわけです。

古典論と量子論では放射メカニズムが違うように思えますが、これは格子振動を量子論的に言い直しただけなのでしょうか?それとも、「格子振動で出る放射」+「電子が基底状態に戻るとき出す放射」は常に両方とも出ているということでしょうか?



(524)  (Re:521)
Re:熱放射
TOSHI
2006年06月19日(月) 02時19分

  こんばんは、航空さん、TOSHIです。

>古典論と量子論では放射メカニズムが違うように思えますが、これは格子振動を量子論的に言い直しただけなのでしょうか?それとも、「格子振動で出る放射」+「電子が基底状態に戻るとき出す放射」は常に両方とも出ているということでしょうか?
>

  非常にいい質問で感心しました。

 空洞輻射の古典論というのは熱による電荷の振動が原因ですが、金属などの陽イオンの振動する、いわゆる固体物理でいう「格子振動」ではありませんでした。失礼しました。

 空洞内の壁が同じくらいの熱エネルギーをもらっても重い原子核はあまり振動せず、主に影響を受けるのはその周りを回っている電子の振動のほうでした。だから、古典論では電子の振動による電流の加減速が原因です。

 同じことが量子論では熱エネルギーをもらうと回転する電子が内側の軌道から外側の軌道に移るということで回転は横から見ると振動ですから軌道半径が大きくなることが振動周期=回転周期が小さくなり振動数が増加することと同じであればいいですね。

 もちろん、古典論でも振動でなく電子の回転エネルギーが大きくなったと仮定しても電流の加速度運動には違いないですから説明にはなります。

 ところが、そもそも古典論では基底状態で軌道をまわる電子でも、回転するということは電荷が加速度運動しているので,またたく間に(10の−10乗程度の寿命だったかな?)電磁波を放射して原子核に落ちて電荷が中和されてしまうのでラザフォード模型の原子が安定して存在できない、ということから破綻する、というのも量子論が生まれた「経緯」の一つですね。

                                TOSHI



(525)  (Re:524)
Re:熱放射
TOSHI
2006年06月19日(月) 03時19分

 PS:そもそも熱というエネルギーの形態はどういうふうに移動するものかというと、伝導と放射がある、ということが昔から経験としてわかっていました。

 だから、空洞に熱があって伝導媒質がないならば、放射のほうがあるだろうということは別にわかっていたのです。ただ熱線の放射の正体が電磁波であることは電磁気学が完成の域になってはじめてわかりました。

 そもそも何もソース=電流源がない場所でも電磁波は存在して飛び交っています。だから、1900年代のはじめにはその電磁波の実験でわかっている空洞内のエネルギー分布を説明する式を見つけたい、というだけで何故、放射=電磁波があるのか、などとたずねる人はいなかったでしょう。

 人間には熱があるから、それはオーラのように低い温度のほうに流れる、そしてまわりには空気という媒質があるので一部は熱伝導、一部は放射で熱が流れる、という経験的事実をそのまま受け入れるのが、いわゆる哲学者ではない近代科学者の態度でした。

 別になぜかと質問するなとは言っていません。それも大事なことです。それを追求したからこそ分子論的統計物理学ができました。

 ニュートンも、なぜ引力があるのかを悩むのでなく、こういう式にしたがって「万有引力の法則」が成り立つということを発見しました。

                    TOSHI



(530)  (Re:525)


Re:熱放射

航空
2006年06月19日(月) 22時20分

こんにちはTOSHIさん、お答え下さりありがとうございます。

> 空洞内の壁が同じくらいの熱エネルギーをもらっても重い原子核はあまり振動せず、主に影響を受けるのはその周りを回っている電子の振動のほうでした。だから、古典論では電子の振動による電流の加減速が原因です。

なるほど、古典論も量子論も同じ放射メカニズムは同じなのですね。

ところで空洞放射の話が出たので、少しだけ質問をお許し下さい。
空洞放射(黒体放射)は熱平衡状態にあるとききます。熱平衡状態とはTOSHIさんがおっしゃったとおり、何もしてないのではなく、放射を出したり吸収したりを繰り返したりしているものですよね。太陽などの恒星は黒体放射で近似できるといいますが、これはどういうことなのでしょうか。どう見ても恒星が「あらゆる波長を吸収する」ようには見えないのです。主題とずれた質問で本当に申し訳ありません。自分の予想としましては、
「太陽内部を黒体と考えて、そこで熱平衡状態となり、吸収散乱しているうちに光が外へ出る」
これなら説明できるかなぁ、といった感じです。



(532)  (Re:530)
Re: Re:熱放射
TOSHI
2006年06月20日(火) 12時27分

  こんにちは。。TOSHIです。

>ところで空洞放射の話が出たので、少しだけ質問をお許し下さい。
>空洞放射(黒体放射)は熱平衡状態にあるとききます。熱平衡状態とはTOSHIさんがおっしゃったとおり、何もしてないのではなく、放射を出したり吸収したりを繰り返したりしているものですよね。太陽などの恒星は黒体放射で近似できるといいますが、これはどういうことなのでしょうか。どう見ても恒星が「あらゆる波長を吸収する」ようには見えないのです。主題とずれた質問で本当に申し訳ありません。自分の予想としましては、
>「太陽内部を黒体と考えて、そこで熱平衡状態となり、吸収散乱しているうちに光が外へ出る」
>これなら説明できるかなぁ、といった感じです。
>
>

  太陽に限らず、人間でも周囲と同じ温度でなければ熱平衡ではないですよ、太陽の場合、つりあっているのは自分をつくっている物質の自重と内部の核融合による圧力であって、まあ、そのうち自分の重力に負けるはずですが、内部に発熱源がある場合はもちろん、熱平衡のときの法則は近似としてしか使えません。人間も死ねば、そのうち周囲と同じ温度になって熱平衡になります。どこかの宗教で体温が0度になってないからまだ生きてるとかってのがあったなあ。。。

 製鉄しているときの鉄の色やろうそくの炎など色温度というのがあって色と温度の関係は黒体輻射の分布でのピークの波長の色で温度を判定しますが、黒体というものは理想ですから通常は吸収エネルギー分布に1より小さい係数がかかりますが、平衡ならば吸収と放出あるいは反射の収支は0ですが、平衡でなければ吸収と放出の収支は0とは違います。しかし分布およびピーク波長は物体によって変わらないはずですから、気にする必要はないでしょう。ただし、人間の色覚というのは生物学的には複雑で単なる物理的な光の波長とは違います。念のため。。。。

                                     TOSHI

                                 TOSHI



(534)  (Re:532)
Re: Re:熱放射
航空
2006年06月20日(火) 17時37分

私はやはり黒体放射についてよく分かってないようです。数式だけ理解してもだめですね…。
もう少し、プランク分布の物理的な意味を勉強します。
色温度と有効温度の違いを理解する前に、黒体近似について質問したのは愚かでした(苦笑)。

TOSHIさん、私の質問にお答え下さって本当にありがとうございます。
また機会があれば、よろしくお願いします。





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